戦っていた。殺しあっていた。容赦なんかしていなかった。
憎んでいた。怨んでいた。羨ましくもあった。
辛くなんかない。寂しくなんてない。愛してなんかいなかった。



アイツが、俺の構えてた刀に自ら刺さってきた。
これだから人間はわからない。
人間でない俺には、たぶんずっとわからない。

「お前、なんで、」
「はぁ、はぁ、抱き締めたいと、思ったから、う、はぁ」
「死ぬのがこわくないのか」
「こわ、い、よ…はぁ、でも、しあわせだから」

ごぼ、とアイツは血を吐いた。俺と違って、赤い血だ。とても暖かい。
こんなに暖かいものが、体じゅうを巡ってるんだ。人間はわからない。
腹を貫いていた刃を容赦無く抜くと、更に血が噴き出した。
血は俺の体を汚した。
赤い血。暖かい血。
俺はこれが羨ましかった。俺はこれが欲しかった。
人間でない俺は人間を、アイツという人間を。


「これでひとつになれれば良い」


どちらが言ったのかは覚えていない。
俺が言ったのかも知れないし、アイツかも知れない。
或いは、どちらも。
ただ、確かにあのとき俺はそう思ったのだ。