彼のことは、数日前に殺した。仕事だった。
殺し屋。
俺は所謂そういう仕事をしている。
どういう訳か幽霊となって再度俺の前に現れた彼は、もちろん俺を殺すと言っていた。当たり前だ。怨みもするだろう。俺のせいでたった一度の人生の、終わりを強制させられたのだから。
しかし、彼は怨恨などという人間らしい感情ではなく、人間らしくはあるがこの状況ではおおよそ有り得ない愛という感情で、俺の死を望んでいるらしい。
自分を殺した俺に惚れたから殺したいというのだ。全く訳がわからない。
そんな彼に、訳を聞いた。
「きみは美しいから。一目惚れさ。
早く殺して、連れて行きたいんだ。だから、早く死んで?」
そうですか。
そんなこんなで、彼は俺に憑いている。けれども、俺はまだまだ死なないだろう。そんな気がする。
そして彼は、今わの際まで俺のそばにいるつもりなのだろうか。
或いは、死んだあとも―
あぁ。この幽霊には困ったものだ。
一番の困りの種は、ほだされそうになっている自分自身だが、この際それはおいておく。