25世紀後半、地球温暖化はこれ以上ないってほどにまで進行した。
科学者が言うような海面上昇も、豪雨・干ばつなどの異常気象も、大規模な砂漠化も、マラリアやコレラの流行も、何も起こらなかった。
ただ、地球はあったかくなった。7℃くらい。
鬼。
異形のもの。人々が恐れおののいた化けもの。
しかしその起源は人間よりはるかに古く、恐竜と幼馴染みくらいだ。
白亜紀末に、その幼馴染みと別れを告げ、彼らは死ぬ気で氷河期を越えたものの、温度の低くなった地球では繁殖するのが難しく、ごく少数が細々と生活していた。
だが、あたたかい今の地球は違う。
温暖化で中生代とほぼ同じ平均温度となった今では、条件がばっちり一致したのか、とてつもなく増えた鬼。
人間はというと、急な温度の変化に耐え切れず、海面上昇も異常気象も砂漠化も感染症の流行もなかったはずなのに、もはや絶滅状態。
人間が減って、鬼が増えた。
これは必然だ。
「あいつ、角がない。気持ちわるーい」
「やめなよ、何されるかわかったもんじゃないよ、人間なんて」
「(…まぁ、慣れっこだけどネ)」
昔、人間は鬼を恐れた。
それは鬼という存在が不確かで、彼らの性格も性質も何もかもを知らなかったからだ。
つまり、未知な存在への恐怖であった。
まぁ、鹿など大抵の角を持つ動物は威嚇や攻撃のためにそれらを持つ。そんなわけで、鬼の風貌は少し攻撃的だったということもある。
しかし、今は鬼全盛期(いつまでもこの状態かも)で、角の無い人間のが珍しく、そして鬼からは警戒される存在だ。
町を歩いていたら餓鬼(まさしくだな)に石を投げ付けられたり、店では不利な取り引きを強制させられたりする。今の世の人間は江戸時代の異邦人かっての。
なんともまぁ、人間の行き辛い世界になっちまったもんだ。
戦争だ核だ宇宙開発だと輝いてた人間様は何処へ行ったのだろう。
ぶっちゃけ、人間が跋扈していた時代なんて知らないけどね、俺は。