中メトロポリス

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綺羽です。
さりげに唯我独尊美少女彼女な姫凜や、地味にアクの強い姫凜のお兄ちゃん(※語弊)伊和に押されて、なんとなく影の薄い綺羽です。
あれ、こう書くと明確なキャラ付けのされた人がいない…まぁいいや。

ところで、私は今ものすごく困っています。
もちろん姫凜のことです。私を揺るがすのは姫凜だけ、なんて表現するとロマンティックでラブい感じに聞こえるけど、普通の人と姫凜を比べたとき圧倒的に姫凜のが困ったちゃんだって意味です。
…まぁ惚れた弱みってのも多少ありますが。多少ね!


実は今日、予定より帰宅が遅くなりました。
理由はお友達(いや、ちゃんと、ほんとに、ただの友達だからね!)と買い物に寄ったから。
もっと正確に言うと、買い物に行った先のお店にあったUFOキャッチャーに夢中になってたっていうか…。

そう!UFOキャッチャー!その話!
でね、お店で通り掛かりにチラッと見掛けたUFOキャッチャーなんだけど、かんわいーい縫いぐるみがあったの!
それが欲しくて欲しくて!元々UFOキャッチャーなんてあんまりしないし、ちょっと奮闘してたら、帰る頃にはこんな時間。あーあ、本末転倒かも。


だってさ、その縫いぐるみが欲しかったのだって、姫凜がこれをぎゅっとして寝てたら可愛いなぁ、とか思ったからだし…。いやでも、寝るときは縫いぐるみなんかじゃなくて私をぎゅっとして欲しいかも…。じゃなくて!

そう、姫凜にプレゼントしたかったの。
実際の姫凜は男より男前で少し亭主関白なところがあって、絶対に可愛い縫いぐるみを抱き締めて寝ることなんか多分ないけど。恋人である私がそれとなく頼んだらやってくれるかもしれないし。
うーん、私って意外と乙女思考。まぁ恋する(もう恋じゃなくて愛、だけど)おんなのこだし仕方ないかな?


それにしても姫凜は可愛い。惚れた欲目じゃなくて可愛い。
そして私は可愛いものが好きだ。可愛いものを可愛がるのが大好きだ。可愛いもの+可愛いものの組み合わせは最強すぎる。
だから私は姫凜にプレゼントをするのが好き。可愛いなって思うものを見付けたらつい買ってしまう。

今日もそんな感じで、どうしても姫凜にプレゼントしたかったんだけど…はぁ。
ここで最初の問題に戻るのね。
姫凜、怒ってないかなぁ…。

私がこんなに心配しているのは、姫凜がとても寂しがり屋だからだ。一番困るのは別れを切り出されることだけど、姫凜が悲しくて泣いているのも嫌だ。




「ただいま…姫凜?」

狙ったかのように室内は暗い。
もし寝てたら悪いので、インターホンで姫凜を呼んで開けてもらうことは、基本的にしない。
お揃いの鍵(同じ家だから当たり前だけど)を使いたいってのもある。うん、乙女心。


「姫凜ー?今帰ったよー…」

姫凜からの返事はない。
リビングにいたら気付くはずなんだけど…。
リビングにはうっすらと電気が付いていて、ぶっちゃけ真っ暗より怖い。

あの薄明かりの中で姫凜が正座していたらどうしよう。
怖くてリビングに踏み切ることができないヘタレな私。あはは…。

まず、電気のスイッチを入れてから部屋に入ろう。そうしよう。

パチ、とスイッチを押すとすぐに電気が付いて部屋中が明るくなる。
良かった、正座の姫凜はいない。


安心したのも束の間、ソファーを見て固まる私。
姫凜がソファーで眠りこけていたから。
かっ、風邪引くよ姫凜!


「姫凜、姫凜。風邪引くよ。起きて」


立ったまま、軽く揺すって起こそうとするけど、この眠り姫は手強いのだ。いっそ本当にキスしてやろうかとも思う。
そのへんに荷物を置いて、コートも脱がないまま姫凜のそばに座り込む。


姫凜に近寄ろうと思ってそばに座ったから当然なんだけど、目の前には可愛らしい姫凜の寝顔。

これはヤバい。
とてもよろしくない。
何故なら私の唇は、勝手に姫凜の唇に照準を合わせてしまっている。
姫凜は童話の眠りひめではないから、そんなことをしても起きないのよ、私。

わかってはいるけど、止まらない。


待たせた挙げ句、眠ってる間に勝手にキスなんて、これじゃただのけだもの…!


心の中で葛藤はあるけど、止めれないのはわかっていた。
姫凜が可愛い過ぎるのがいけない!と責任転嫁しておく。



ちゅ。

目を瞑って唇をくっつけたまま、私は思った。
舐めったら起きちゃうかな。
…最低だ。

これ以上は姫凜が許さない(第一、寝てるときにしてもしょうがない)ので、名残惜しくも目を開けて唇を離す。

すると、ぱっちりと目を開けた姫凜がいた。
いつもはこれくらいで起きないのに!


「ひっ、姫凜?!起きて、た…?」
「……」

姫凜はまだ寝ぼけまなこで、ぼーっと私を見つめ、言った。


「今のは、ただいまのキス?」
「えっ、うん…」

勢いに任せて、肯定する。そうしたら、唇にまた感触。


ちゅ。

「おかえり」


晩ご飯、食べて来てないなら、ラップ掛ったのが食卓にあるよ。そう言って姫凜はまた気持ち良さそうに夢の中へ旅立っていった。
私はというと、ヘタレで勝手な自分に涙しそうになった。縫いぐるみのことは忘れていた。



「そして!やっぱり姫凜を選んで良かった!いやむしろ、私なんかが姫凜に選んで貰って良かったなぁとしみじみ感じたの!」
「……」
「ねぇ聞いてる?聞いてるの義兄さん!?」
「…僕は姫凜の兄さんじゃないのと、たとえそうでも兄に妹の惚気をかますのはどうかと思うよ」
「だってぇ!姫凜が可愛いのがいけないの」

冒頭では散々言ってくれたけど、君も大概だと思うよ綺羽…。
妹分の恋人(ちょう笑顔)、と妹分本人に、僕は翻弄させられるばかりだ。
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